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ライナーノーツ【 第3話 】オリジナリティとは?

スポットライトに浮かび上がるバンドマン

音楽ドキュメント・ストーリー「業界編」: オーディションで優勝したものの、時代の変わり目でチャンスを逃したオレは バンドを解散し、「東京を離れたい」と、茅ヶ崎の地で 音楽スタジオを作り運営。しかし1年ほどでまた東京へ舞い戻ることになった。出口を求めてさすらう日々。

 ライナーノーツ

最初に「跳べ!ロックンロール・ジーニアス」を読んでください 

この物語のテーマ曲 fine を聴く ?

【 第3話 】オリジナリティとは?

 

 

〔茅ヶ崎に、音楽スタジオをつくる〕

 

バンドが解散して ーー

 

オレはもう東京に居たくなかった。これ以上人間関係で苦しむのはイヤだ。
どこか・・・・自然のある、田舎で暮らしたい。へっ、・・青いね。

のどかな田舎の畑の風景

 

「そうだ! 海の近くに引っ越して、バイトを探して。潮騒の音を聞いて暮らそう」

 

そう思っていた所へ、高円寺のスタジオを設計してくれた S さんって人から話があったんだ。

「音楽スタジオの運営をやってみないか?」

バブルの頃の話だよ。S 氏は、幡ヶ谷に自分の経営するスタジオがあって、けっこう儲かって たらしい。銀行が金を借りてくれって言ってきてるらしくて、二号店を出そうかと考えてる。彼としては、ケナゲに高円寺でスタジオを運営してるコイツらなら・・っていう目算があったんじゃない?

レイ ギャンを通じて 連絡があったんだ。

「もし、海辺の方にスタジオを作ってくれるなら、やってもいいですよ」

young woman enjoying sunset on the tropical beach

 

オレは「音楽スタジオ経営」なんて、あまり興味もなかったから吹っかける気分で言ってみたんだ。湘南あたりでスタジオ経営なら気分良さそうだし、いいんじゃない。なんて・・ どうせ実現しないだろうけど。

 

「OK 茅ヶ崎に作ろう」

 

S さんが軽く OK したから、びっくりしたもんね。

あの頃の、バブルってのは恐ろしいもんだ。オレの周りにはちっとも金は流れてこなかったけど、音楽やってない友人知人たちの懐にはブンブンうなりを上げて大金が転がり込んできてた。でもオレは、負け惜しみじゃなく、そんなことはまったく羨ましくなかったよ。だってオレはスーパースターになるんだから、目先の金はとりあえずいいよ。それよりいいバンド作って再び大勢のファンに囲まれて・・ って、そういう想像だけで幸せだったもんな。

でも、この時ばかりはバブルの恩恵にあずかれて嬉しかった。

渡りに船とはこのことだ。
バンドが解散して、高円寺のスタジオも引き払う所だったからね、話に乗った。

 

でも、とんでもない話だったよ。

あのね、人の金をあてにするな! 地獄に落ちるぜ、ってこと。
人間って、自分の足だけで立たなくちゃ駄目だ。やりたい事があるなら自分で金貯めて自分の責任、範ちゅうでやれよ、ってことさ。で、ないと とんでもないことになる。

これ以上、この件については書かないよ。

バンドマン ステージ写真

 

ジーニアスが終わって。オレは気持ち的に逃げてた。引いちゃったんだな。その結果、茅ヶ崎に来たでしょう? 何の解決にもなってない。

 

苦しみって、逃げると追ってくるんだよ。
仲間を連れて、大きな不幸のかたまりになって、襲いかかってくる。

茅ヶ崎に、レコーディング設備つきのスタジオをオープンさせて。客は結構入った。でも・・・・

 

せっかく海の近くに住んでるのに。海なんて見に行った記憶もない。さらにひどい借金と人間関係に苦しめられるようになってたからね。逃げちゃいけないんだ。
一方、バンドの方はというと・・・・・いいメンバーが揃っていた。
レイギャングとヤスコ クイーンの他に、「うまいな。そのうち機会があれば、一緒にやろう」と思っていた、タケシってギタリスト。

彼のギタースタイルは、ヌーノ・ベッティンコートというような・・ま、それまでやってきた連中とは明らかに違う「新世代」のギタリストだな、って思ったよ。 顔も女の子みたいだし、スラッとした体形でポールギルバートを彷彿させた。指なんか細くって長いしさ、ほんとギタリストって雰囲気。取り巻きみたいな友達をいつも引き連れてた。仲間内のヒーローだったんだよね。

 

the young guy playing an acoustic guitar. Shooting backlit

それから、女だけどすごくパワフルで魅力的な モンチってドラマー。
コイツのドラム最高! シンプルだけど ドカンとくる。ドンブリュアーとか、ボンゾあたりのロック・スタイル。でも、叩いてる姿は にっこにこの笑顔でね、そのギャップがまたいいんだ。
バンドでステージをやってると

「いいっスね、あのドラマー カッコイイなぁ」

って よく言われたよ。
モンチってのは モンチッチに似てるからオレが付けたんだけど、ホラ おさるが ドラムだかシンバルを叩くおもちゃがあるじゃない? 最初 パッと見た時 そんなイメージがしたんだ。この場合 モンチだろう、ってね。

このキャラクターは売りになるなぁ、と思った。彼女は案の定、客の視線を持っていってたし。バンドもいいけど、ソロなんて面白いかも。ライブとかではステージのまん前にドラムセットを置いて・・ モトリークルーのドラマーみたいにフューチャーしたら面白いかも、なんて考えたりした。

さるのオモチャ

 

そんな連中とオレを入れて五人編成。
やるのは 骨太のファンクンロール! イメージはふくれ上がった。

「JAPS」っていう名前にしたんだ。オレの新しいグループ。

「茅ヶ崎にスタジオもあるから、来いよ。うんと練習して、カッコいいバンドにしようぜ」
「うん、やろう。やろう」
また、希望に燃えて活動をはじめた。
ところが。相当ロックに傾いたから、昔のファンがついて来れないんだ。
ジーニアス解散の時にね、ギタリストに言われたの。

「オレが居なくなったら、曲作りとかアレンジどうすんの?ロックっぽくなくなっちゃうじゃん」
カチン、ときちゃってね。
「よぉし、そういうこと言うんなら、ジーニアスの時よりもゴリゴリでハードにしてやろうじゃ ないか」

3人のバンドマンの写真

 

意地になっちゃって。ちょっとマニアックになりすぎたな。いけないよ、やっぱり。音楽はもっとナチュラルで楽しくなくっちゃあ。フーリッシュなプライドでやるもんじゃないからね。

 

YAMAHAのオーディションで、ともに中野サンプラザを戦った「シフト」の連中とつるむことが多くなった。一緒にライブをやったり、イベントに出演したり。茅ヶ崎のスタジオでレコーディングして、ジャップスとシフトでオムニバス アルバムなんかを作ってたりして。

骨太なバンドにはなってきた。でも、納得するには程遠い。

ファンクンロールはやりたいけど、どうすれば そんな曲が書けるのか? 再び疑問にぶち当たった。

シフトのギタリストが、すごく音楽知識とセンスがあって。

 

「草野ちゃん、どうすれば そんなファンキーになれるんだい?」って聞いた。色々教えてくれたけど、音楽的なルーツを作り直さなければいけないみたいね。

「まずは、ファンキーでカッコいいバンドを聴くことだよ。聴いて、聴いて。聴き込んでコピーする。カズちゃんのために、いっぱいカセットにオススメのバンド吹き込んどいたから」

音符と羽根のイラスト

 

1990年代の初期だからね。

この時点で CD はあったけど、まだ「カセットテープ」に音源を吹き込む時代だった。

 

山程 カセットテープやビデオをくれたんだ。そういうことするのが好きみたい。彼。

仲間内の音楽的リーダー。ロックの先生みたいな存在で、オレが知ってるだけでも「彼に育てられてすごくカッコイイ ロッカーになった」ヤツは多いよ。素晴らしいロックンローラーであり「ロックンロール・ティーチャー」でもある。草野ちゃんに出会ったことでオレはロッカーとして見られるようになっていったから、本当に感謝している。

「BBA」 「ハンブル パイ」 「アレサ フランクリン」に「グランド ファンク」
新しい所では、「ブラック クロウズ」や「サス ジョーダン」 「スティーヴィ サラス」・・・・
吸収すべき ミュージシャンは山程いた。

「本物のセンスを身に付けなければ。登って行って 又、世界大会の時みたいに 才能あふれるミュー ジシャンに出会って おたおたしたくないからな。自分のサウンドを確立するんだ」

そう、オリジナリティ。
それまでも、オレ達は十分個性的だった。オリジナリティにあふれていたと思う。でも、それはパフォーマンスに関して、だ。

道行く人の目を、一瞬にして釘づけにする。
そのためには何でもした。転がったり、サックスを吹きながらバク宙したり、ギターから火をふいた り、ね。

そういった事に関しては、絶対に自信があった。

それでコンテストに優勝するぐらいまでは行けただろ? どんな奴でも納得させる。理屈じゃなく、オレたちのパフォーマンスで・・・・

そういう意味では、非常に「原宿的」なバンドだったと言えるかな。

でも。そろそろ気づいてきた。
音楽的にはツマんない。音楽マニアを納得させる意味でだけど、バンドマンとしての「サウンド面での深み」が足りなかったんだな。こういう音楽修行の道に入っていくことで一般客をどんどん失う結果になっていった。しかし通らなきゃいけない道だったんだよ。マニアも納得させられる音楽的ルーツを作った上で、マニアックに走りすぎない多くの人が楽しめるポップさを配合した音楽に戻っていく。

一回はマニアックな道に入らなけりゃいけない。わかった上で、自分の音楽の立ち位置を見つける。たとえば「ポップさ60%、ロック30%でファンキー10%」とかね。アレンジ能力っていうのは、そういう本物の音楽知識を身につけないと絶対に手に入れられないものだから。今までのオレは、そうじゃなかった。

 

だいたい「オリジナリティ」ってことを理解してなかったんだ。自然に自分の中から湧き上がってくる もんだとばかり思っていた。生まれた時には既に持ってるんだとね。

 

オリジナリティというのは———————

何もないところからは、絶対に生まれない。

たとえばオレの場合、「フン フン」って鼻歌まじりに作曲してた訳だけど。それは今までのしみつ いた「アカ」のようなもので。親やまわりの友人、知人。TVやラジオ、有線やカラオケから流れてきた はやりの歌。そういった物を、知らず知らずに取り込んで、自分のオリジナリティだと勘違いしていたんだ。

そういう曲をやるんだったら、バンド組まずに芸能界のアイドルやった方がいい。
バンドやるなら、まずコピー。カッコいいバンドの演奏をてってー的に分析して、まねる。

父をマネする息子 Father and son knotting ties

 

なぜカッコいいのか?なぜ人がしびれるサウンドなのか? そのバンドの、そのプレイヤーになりきるぐらい「ものまね」してみる。

これって音楽だけの話じゃないよね?

 

全てのオリジナリティは「まねる」ことから生まれる。真似るは「まねぶ」つまり「学ぶ」ということだ。
絵がうまくなりたかったら、うまい人の絵 そっくりに描いてみる。ミケランジェロの天上画をスケッチして たくさんの画家が育ったように。いや、ミケランジェロだってレオナルド・ダビンチを真似てプロになった訳だし。

野球選手やサッカーのスターになりたかったら、そういうセンスのいい人のフォームを盗む。みんな そうやってきた。一流になった人たちは。

まねするのは一人じゃなく、タイプのちがう 色んな人たちの影響を受けるべきだ。もちろん 自分の好きな人っていうのが前提だけど。そういう色んな人のコピーが自分の中で化学変化を起こして、自分の個性を強く 深いものにし ていく。

一人の人間が一生をかけて作り出すものは、たかだか四十〜五十年の歴史しか持っていない。底の浅いものだ。
ところが、過去の偉大な人々が作り上げた遺産の上に家を建てれば、自分の四十年プラス何百年という 人類のキャリアがプラスされる。

「センスがいい」
って言われる人は、そういうキャリアを受けついだ人達のことを言うんだ。そうやって歴史は続いていくーー

人類進化の過程イラスト

 

ついでに言うと、ストーンズのキース リチャーズは、自分のヒーローだったチャック ベリーを今で も大事にしている。

明らかにチャック ベリーの弾くフレーズよりも、キースの方がカッコよく 現代的に洗練されていた としても、チャック ベリーは自分のスタイルをゆずらない。キースもそれを認め、サポートする。

歴史を作ってきた先輩を大事に出来なければ、いつか自分も粗末にされる。
ピークを過ぎた時にーー

 

日本の様々な分野で、この過去から未来に続いていく歴史が粗末にされていないかな?
これは先輩たちにも原因がある。
たとえばバンドの世界だったら、自分が売れた時に 無名の後輩たちにチャンスを与えているか? アメリカだったら、ワールド ツアーの前座とかに有望な新人を使う。チャンスを与えている。それが刺激にもなるし、時として前座にメインが食われちゃうこともあるけど・・・・・

 

そーゆーことをやってる日本のバンドは少ないよね?
大人達が、子供にチャンスも希望も与えなければ、子供だって大人を尊敬するようには ならない。だから、ピークが終わったら、それで歴史が切れてしまう。

さみしいね。日本でバンドマンの厚みが足りないのは、そういった理由だ。

 

= つづく =

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イベントで歌うバンドマン

イベントで歌う ロックンロール社長 kaz

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ロックンロール 社長 池松 kaz

ロックンロール 社長 池松 kaz

株式会社ジーニアスインターナショナル
(http://www.genius-kaz.co.jp)代表。Smart CrutchJapan 代表。Lily Nily Japan 代表。Funky Station 代表。渋谷区在住。

貿易会社社長として活動する一方、ロックバンドのシンガー、サイドギタリスト、作曲家、作詞家としても活動し、音楽とビジネスの融合を目指す仕事を展開している。

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