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跳べ!ロックンロール・ジーニアス【 第10話 】

バンドオーディション

音楽ドキュメント・ストーリー  跳べ!ロックンロール・ジーニアス

1980年代に巻き起こった 原宿歩行天バンドブーム の真実

【 第10話 】 オーディション

 

 

〔はじめてのオーディション合格〕

 

はじめてのオーディション合格通知が届いた。

それまでにもいろんなコンテストに応募してはいたけれど、

どれも一次審査で落とされていたんだ。人気はうなぎのぼりだったけど、それはパフォーマンス込みのライブ評価で。演奏力はまだまだひどいものだったから・・・

デモテープだけでは、やはりレベルの低さを隠すことは出来なかったみたいだ。

ところが、だんだん世の中がビジュアル面にも注目しだすようになって。アレは、MTVなど向こうのプロモビデオの影響だろうな、きっと。マイケル・ジャクソンがスリラーなんかを発表していた頃だから。デモテープ以外にも、バンドのステージのビデオなんかを受けつけるコンテストが増えてきたんだ。

で、ストリートで暴れているビデオを送ったら、一発で合格通知が届いたの。

『多くの応募の中から、あなたのバンドが一次審査を通過致しました。おめでとうございます。つきましては、二次のライプ審査を 銀座 山野楽器にてとり行いますので・・・・』

「ヤッター!」

って皆で手を取り合って喜んだ。ここから先は未知の世界。まだ経験したことがない。

 

録音

 

「どうなっちゃうんだろうねぇ、これから」

期待と不安とちょっぴりの自信が入り混じった顔でお互いを見つめ合った。

1ヵ月後ぐらいに、二次オーディションがあったのかな? 行ったよ、楽器をかついで。

「うわあ、ここが山野楽器? 1階はレコード屋さんになってるんだねぇ」

「でっかいなぁ」

「オーディション会場は?」

「えーと・・・4Fって書いてあるよ」

軽いライブが出来るホールがあって。そこが審査会場だった。
すでにたくさんのバンドが集まって、廊下でタバコ喫ったりして話してるんだ。
ひとくせも ふたくせもあるような連中。それなりに雰囲気があって、自信あり気にポーズとってる―――バンドマン。

「カッコいい。やっぱり一次を通過してくるような人たちは違うね。個性的で・・・うまそうだよ」

「冗談言うな。負けねぇよ! オレたちが一番だ」

雰囲気に呑まれそうになるメンバーにオレがハッパをかけた。
不利なのは解っている。でもそれを認めちゃったら、どこかに消し飛ばされそうで・・ 強がった。
他のメンバーをにらみつけて、ウソでも自信あり気な顔していろってね。
勝負はもうはじまっている。

 

The guitarist plays solo.

 

30組ぐらいのバンドが狭い会場に押しこまれて。
審査員やスポンサーの紹介があったんだ。

「えーっ、優勝すると車が貰えるんだって!?」

車会社がスポンサーになってて。副賞が車。

 

「よし、あれがあれば地方のツアーに行ける。狙うぞ」

 

物欲と名誉欲をごちゃまぜにした空気の中で、オーディションがはじまった。
朝から夜まで、各バンドがセッティングして演奏して、次のバンド。そのくり返しが延々続く。待ち時間が長くて退屈した。

やっと発表があった時には、腹が減って疲れて、もうどうでもいいから早くしてくれって感じ。

8組ぐらいが最終オーディションに残って、その中にオレたちジーニアスもいた。

 

三次の最終審査は、湘南のビーチに作られた 特設ステージで行なわれたんだ。

夏の湘南、海とライブ。さわやかだぜ。加山雄三かサザンオールスターズか、はたまたチューブかよってなもんさ。

メンバーは、もう海水浴気分でね。トモコ チビ太のヤツ、黄色いビキニなんか着ちゃったもんだから、

「ギャー、チビ太。何だよ お前、その水着」

浜辺で寝そべって、ビール飲んでたメンバーのつまみになっちゃう。

「サイズが合ってねぇよ。おしりんとこ、オムツしてるみたいにブカブカじゃねぇかよ」

「えっ? そうですかあ? セクシーだとおもったんですけどォ」

チビ太が短い足でポーズをとったら、

「ヒヨコだ」

誰かが言いだして、

「あっ、ホントだ。黄色いヒヨコ、ぴーよぴよ」

「ヒヨコ ヒヨコ」

ってふざけて、オフ気分を満喫していた。夏の太陽と潮風が、心を解放してくれた。

 

ひよこ

こういう感じでした

 

そうやって遊んでいるうちに、ステージ上のサウンドチェックも終わり、次々にパンドの演奏が進んでいく。
オレたちの番が来て。
「ドッカーン」と派手なパフォーマンスが爆発した。

毎週ストリートで、行きすぎる人々の足を止めてきたステージングは、海水浴客たちにも充分アピールするものだった。

「ピーピー」

浜辺の客は 指笛をならしたり、歓声を上げて楽しんでる。

「オイ。受けてるよ、どうする?」

「車、いただきだな」

自信がわいてきた。

でも、結果発表があって、

「審査員特別賞・・・・ロックンロール ジーニアス!」

 

呼ばれて。ガクッと来た。

ガクッと来たけど・・ まぁ 一応賞はもらったし。無視されなくて良かったよ、なんてメンバー同士 結構満足してたんだ。はじめてのコンテストにしちゃあ上出来だ、ってね。

「やっぱり優勝は、あのバンドかねぇ?」

いいな、と思うバンドが2つぐらいいて。テクニックもあるし、バンドのルーツもしっかり見える。
長い年月をかけて、自分のサウンドをつくり上げてきた。そんな自信と新鮮さにみなぎる演奏を聞かせていた。

 

パフォーマンスバンド

 

 

「優勝は・・・・!」

アレッ?
司会者の上げた名前は、まったく意外だった。
会場にどよめきが起こる。優勝と目されていた2つのバンドのうちの1つは、準優勝を取ったけれど、もう1つの方は・・・全くの選外に終わった。

準優勝のバンドがインタビューされて、

「ま、こんなもんでしょう」

明らかに納得していないコメントに、司会者もドギマギと言葉を濁した。

「チッ。やられたな」

裏の控室みたいなあたりに、いくつかのバンドが集まって ひそひそと話をしていた。

「ヤラセだよ。ヤラセ。完全な出来レース」

えっ? って耳を疑った。

「このコンテスト 去年も出たけど、同じパターンだよ。バンドで盛り上げといて、優勝すんのは ソロのシンガー」

「・・・・・!?」

そういうデビューのさせ方があるらしい。
自分のところの新人をデビューさせるためのイベントとしてコンテストを事務所が主催する。デビューキャンペーンに同じ金をかけるなら、コンテストを催し、そこで優勝させる。ハクもつくし、いい宣伝にもなる。

そういえば、ストリートも猿芝居が横行していた。
あの時期、ずい分 歩行天バンドがメジャーデビューした。

でも、そういうのは 全部ウソだからね。

2~3週しかストリートに出てないバンドが、事務所のスタッフとかヤラセのファンに囲まれて路上演奏の写真を取る。
しばらくすると、

「俺たちこそ、歩行天のスターだ!」

とかいう大見出し付きで音楽雑誌に載り、デビューしていく。

「カズさん、こんな奴らが雑誌に載ってたよ。こんな事、言わしといていいの? サンダーロードのスターはジーニアスじゃん」

ファンがそういう雑誌を見せに、よくオレの所に来た。原宿ストリートがバンド・ストリートと呼ばれるようになってきたから、それをプロモーションに使おうというね。

そういう「でっち上げ」ってけっこう多いよ。さすが芸能界だ。恐いね。

つまり、物事には表と裏があるってことさ・・
「○○ブーム」って言ったって、そのほとんどは 誰かが仕組んだ物の中で、皆が踊ってるだけのこと。それぐらい人は操られ易いし、にせ物が通用するってことだ。

 

最近はインターネットの世界になって、こういうステマは通用しづらくなったけど。当時は、マスコミと権力者のやりたい放題洗脳し放題の時代だったーー

だからオレたちは、心のどっかで 「真実」なんて無いと思ってた。

「ああ、どうせまた ヤラセだろ?」 そんなシラけた気分を、いつも抱えていた。事実、「本物」なんて少なかったし、本物が出ようと思っても、なかなか出れるもんじゃない。そういうシステムだったんだ。金をかけたフェイク(にせ者)が、「本物」の居場所を占領してたからね。文化意識の低いこった。

 

それからは、色んなコンテストの最終オーディションまで残るようになって。

毎回、見ている客には大ウケだった。

「やったぜ。オレたちが一番ウケてるよ。よし、よし」

ワクワクして審査結果を待ってると、「特別賞」
他のコンテストでも「特別賞」。
いつでも「特別賞」、どこでも「特別賞」。

 

「うわりゃー。いいかげんにしろ!」

 

っていうぐらい「特別賞」の山が出来た。
つまりはさ、音楽の選考からは はずれるけど、一応 客席は盛り上がってるし、何かあげとかないと まずいんじゃない? じゃあ、特別賞でもやっとくか。

そういう位置。多分 あの頃、その世界じゃ有名になってたんじゃないかな?

「にぎやかしの 派手なバンドがうちのコンテストに来てさぁ」
「あっ、うちも うちも。アイツら馬鹿だよねぇ。単なる”客寄せパンダ”に使われてるとも知らないで」

実際に、ある音楽関係者に言われたことがある。

「ジーニアスなんて、あんなの単なる”おまつり”バンドじゃん」

音楽マニアの評価は辛口だ。
当時のオレたちは 音の完成度が低かったから、言われてもしょうがないけど、悔しいね。

 

= つづく =

 

海に飛び込む若者

 

 

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バックナンバー

【 第1話 】 Introduction

【 第2話 】 原宿歩行者天国

【 第3話 】 はじまり

【 第4話 】 ロックンロール・ジーニアス結成

【 第5話 】 音楽スタジオ作り

【 第6話 】 目標 年間100ステージ

【 第7話 】 TV出演

【 第8話 】 ギャラ30万

【 第9話 】 時間泥棒

 

 

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ライター紹介 ライター一覧

ロックンロール 社長 池松 kaz

ロックンロール 社長 池松 kaz

株式会社ジーニアスインターナショナル
(http://www.genius-kaz.co.jp)代表。Smart CrutchJapan 代表。Lily Nily Japan 代表。Funky Station 代表。渋谷区在住。

貿易会社社長として活動する一方、ロックバンドのシンガー、サイドギタリスト、作曲家、作詞家としても活動し、音楽とビジネスの融合を目指す仕事を展開している。

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