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跳べ!ロックンロール・ジーニアス【 第11話 】

ギターパフォーマンス

音楽ドキュメント・ストーリー  跳べ!ロックンロール・ジーニアス

1980年代に巻き起こった 原宿歩行天バンドブーム の真実

【 第11話 】 もっと でかいコンテストを

 

 

〔真剣にプロデビューを目指す〕

 

コンテスト荒らしと言ったって、実態はいいように使われているだけ。

これ以上特別賞なんて欲しくもない。

「プロ デビューを目指すんなら、もっとでかくて有名なコンテストに出なくちゃ駄目だよ」

話し合って、ヤマハのコンテストに出ることにしたんだ。

ヤマハには、有名な2つのコンテストがあった。
中島みゆきとかユーミンなんかが出た「ポプコン」世良のいたツイスト、サザンやシャネルズなんかが出た、ロック色の強い
「イースト ウエスト」
でも、どちらも無くなってしまった。

その2つのコンテストを合体させて新たに出発したのが、「バンド エクスプロージョン」という超ドデカい大会だった。
世界中のアマチュアバンドのナンバー1を決めようと、日本以外でもオーディションを行い、アメリカ、イギリス、ヨーロッパだけでなく、中東やアジア圏からも、各国の審査を通過した、その国の代表たちがやってくる。

ファイナル コンペティション(決勝大会)は、あの武道館で行なわれるんだよ。

「こんなスゴいの、無理なんじゃないかなぁ」

あまりのスケールに尻ごみするメンバーもいる。

「何言ってんだよ。どこかでこれを乗り越えないと、プロにはなれないんだぜ。・・・それに、最終的には武道館だけど、まずは小さな店の代表になればいいんだ」

バンドの通行手形

バンド-エントリー・パス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤマハのコンテストは非常に特殊な方法で行なわれる。

全国に何百とある楽器店の主催する、店のコンテストで代表になることからスタートするんだ。

これにはヤマハの経営戦略が見えるね。
各店が毎年コンテストを開くことによって、地元のアマチュア ミュージシャンが活気づく。コンテストで優勝する、という明確な目標は、バンド活動を真剣なものにし、結果 高い楽器が売れ、楽器店も潤う。

ましてや自分の店から送り出した代表バンドが、大きな大会で優勝でもしようものなら、かなりの宣伝にもなるからね。
よく考えられたシステムだと思うよ。

オレたちは神田の小川町にある、「宮地楽器」という楽器屋さんのコンテストにエントリーしたんだ。

 

なぜかと言えば、ウチのスタジオの機材、そこから買ったの。

言ってみればお得意様ってことでしょう? 少しは有利になるかなっていう甘い考えもあったし。

その店の上の方の階に小さなホールがあって。
そこが店大会の場所だった。

「あっ、オレここ来たことある!」

すっかり忘れてたんだけど、昔 知り合いのバンドのコンサートを見にここに来たんだ。
なんだか運命を感じて。良いことありそうな気がした。
20数組のバンドが出たんじゃなかったかな?

「ヨッ、ジーニアス。今日は頑張ってね、自信ある?」

店長のひるまさんが楽屋にアイサツに来てくれた。

「バッチリですよ。見ていてください」

って言った。他のオーディションで「特別賞」ももらってるしな、店大会なんて楽勝。とタカをくくっていた。すると店長は、

「実はさ、ウチの店のスタッフも今日のオーディションに出場するんだ」

なんて言い出す。

「へー、そうなんですか?」

笑いながら「予定が狂ったかな?」と笑顔がひきつった。お得意様のオレ達と自分の店のスタッフ。どっちが有利だ? なんて計算を頭の中でしていたら、

「うちのスタッフのバンド、自信あるらしいよ」

って言うの。だから思わず、

「うちだって負けませんよ」

って対抗した。

そのスタッフは、何度かうちのスタジオに機材の修理に来てくれたり新しく買った楽器を届けてくれたりしていて、顔見知りだったんだ。だから、そのスタッフと廊下ですれ違った時、

「あっ、どうも」

って、オレがアイサツしたら、プイッ とそっぽを向かれた。アレ? 気づいてないのかなと思って、もう一度、

「オレたち、高円寺のスタジオの、ジーニアス・・・」

っていうと、ことさらに無視してる。
なんだ、そういうことか。

あからさまな敵対視だったけどまぁ、真剣に上を狙ってる奴なら、気安く他のバンドと友達づき合いも出来ねぇもんな、と理解した。

 

ライバル-イメージ

 

オーディションの順番、そのスタッフバンドの方が早かったんだ。

オレたちより早く、店バンドが演奏する。

だから、イスに座って見てた。奴らの演奏を。メンバー全員で、腕を組んで。余裕だったんだけど・・・

「ドコダーン、ダダダダ」

そのバンドのドラムが叩いたら、サッ と顔から血の気が失せた。ブッとんじゃったんだ。オレも、メンバーも、そこの会場にいた全員が !

スゲエよ。音の存在感。同じドラムセットを叩いてるのに、全く別の音がするんだ。

他のバンドは、パン パン パシャ―ン、トス トス・・・なんて音してんのに、そのドラマーが叩くと、「ドカーン」「ドス ドス」「パーン」「ガシャーン」

22口径のショボイピストルが、突然 バズーカ砲になっちゃった。音にシンがあって、コシがある。

別に でかい音を出そうと思って叩いてるわけじゃないんだ。ショットが正確で、“タメ”を効かせて、全身ムチみたいにして叩く。ベスト ポイントに当たるから、「ドスン」とくるの。

どんな楽器でもそうだけど、凄い奴が演奏するだけで、その場の空気が変わるんだ。そういうものだよ。音楽って。

そのオーディションで、「音」というものの凄さと素晴らしさを初体験させられた。そしてここがオレの人生の分岐点だと言っていい。感動した。

パフォーマンスばかり気にして、音については「こんなもんでいいだろ」と考えていた当時のオレの頭をかち割ったよね。「音楽なめんな!」って神様に水をぶっかけられた感じ。ここから本当の意味での、オレの音楽修行が始まったと言ってもいい。それぐらい、プロとアマチュアの音の差を見せつけられたんだ。そう、まさにプロだよ。オーディションだから、いるんだな。すぐにでもプロになれる実力持ったやつも・・・
そういう刺激は必要だ。自分の素人かげんに、はっきりと目が覚めたんだから。

 

そうなると、スタッフバンドの奴らは もう余裕でね。「ざまあ見ろ」って顔して演奏を楽しんじゃってる。司会の女も、突然ファンになっちゃって、司会のくせに、もうそのバンドびいきなの。露骨なえこひいき。

 

そいつらの演奏が終わって、メンバーを廊下に呼び出したんだ。

「どうするよ? スゲエもん見ちゃったな」

「うん、あのドラムはスゴいや」

「カッコいいですよねぇ」

それを聞いてたトミノスケがプイッとよそを見て、

「そんな大した事ないよ」

と、吐きすてた。自分はあいつらと変わらない。アマチュアではうまい、って言われてきたんだ。地元では飛び抜けてたし、と。プライドがあったんだと思う。でも。

「・・・・・・」

何と言ったら いいか―――どうひいき目に見ても、トミノスケじゃ足元にも及ばない。それぐらい差があるんだよ。アマチュアとプロの差。悲しい現実。

「トミノスケはさぁ、広島でやってたバンドの中でもダントツにうまかったけん。負けてないよ」

ヒカルがフォローを入れた。優しいやつだ。友達思い、同郷のよしみ。でももう、言うなよ それ以上・・

寂しくなった。そりゃあ大事だよ。信じること、負けないこと。
でも、今は違うだろ。一旦負けを認めて、立ち向かわなきゃあ。現実から目をそらして、逃げちゃダメだ。

「ふざけんな。負けないぞ、バカヤロー」っていう、前向きな情熱ならいいよ。でも「オレはアイツとはスタイルが違うだけで、細かいテクニックは俺の方が上だ」って自分のカラにとじこもってスネちゃダメだ。

「冷静に分析して、吸収するべき所を吸収しようぜ」ってメンバーに言ったけど、トミノスケはそっぽ向いたままだった。

トミノスケの問題だけじゃないんだ。ドラマーほど凄くはなかったけど、ギターも ベースも、ボーカルだって・・ 悔しいけどオレたちより上だ。単純に言って技術力の差ってやつがあった。いつものように強気で「関係ねぇよ」って押し切ることも出来ないわけじゃない。でも・・岐路に立たされていた。

上に昇れば昇るほど、凄い奴は出てくるんだよ。
あまりの違いに打ちのめされる。でもそれは、同時に 自分をもう一段高い所に導くきっかけにもなるんだ。

その時、いい所を吸収して自分に取り入れるか、否定して無視するかで、成長の度合いがすごく変わってくる。もっと上に行けるかどうかが、そこで決まる。

メンバーも、そろそろ気がつきはじめていたんだ。そこのところを、ね。
ある意味、素直じゃない奴は伸びていかない。

背比べ

 

 

いよいよオレたちの番が来た。

でも何だか皆 浮き足立ってる。誰も言わないけど、さっきのショックで気負ってるのは明らかだ。

「チューニング、気をつけていこうぜ」

オレが皆に言った。事前にチューニングを合わせて、完璧な状態でステージに昇りたい。
セッティングが終了して、皆が OK サインを出した。

「行くぜ、GO !」

と言ったら ヒカルが、

「あッ、ちょっと待って」

ってまたエフェクターをいじるから 皆ズッコケた。

ヒカルって、結構そういうことをやるんだ。早めにセティングして、OK になったら言ってねって言っても、必ず後からエフェクターをセットし直す。

ドカーン、とスタートする所が腰を折られて ヘナヘナとしたスタートになった。
それでも力技で、派手にアクションを決めて。

「ん? ミストーンが出てる」

あれほど言ったのに、チューニングが狂ってるんだ。ヒカルもマコトも。

「普段、チビ太には厳しいくせに、肝心の時には自分たちがヘロヘロじゃねぇか」

頭にきながら歌っているオレも集中してない。焦りと孤独と、信頼関係がくずれたようなステージ。音も心も、みんなバラバラ。あの時を表現すると、そんな感じだった。アマチュア・バンドって、いい時にはプロ顔負けのすごい演奏をしたりする。でも、ひどい時には今回のようにボロボロになって。いい時と悪い時の差が出やすい。だからアマチュアなんだ。甘い。それじゃダメなんだ!

その時、マコトがソロを弾きながらバックしてきて オレの足にひっかかり、バッターンって後ろに倒れた。
頭を打ったんだ。それでもなんとか最後まで演奏したけど・・・・・ そんなこと今までになかった。それぐらいみんな浮き足立っておかしくなってたんだ。

 

「落ちたな・・・・・・」

 

みんなでガックリと肩を落とし、流れる汗をぬぐう気力もなく 廊下に集まっていると・・・

「ちょっと ちょっと、こっち来て」

店長のヒルマさんが、スタッフルームにオレたちを招き入れた。

「・・・・・・」

「どうしちゃったの? 今日は。チューニング ボロボロだったねぇ」

「ハァ・・・大失敗です。それにひきかえ うまかったですねぇ、ヒルマさんとこのスタッフバンド」

オレが言うと、

「ああ、あのドラマー、半分プロなんだよ。有名な奴のツアーに同行して叩いたりしててさぁ。まぁ、アマチュアのコンテストにあんな奴が出るのは、反則なんだけどね」

「ああ、やっぱり。うまい訳だあ」

皆が口々に納得した言葉をつぶやく。
今年のコンテストもこれで終わりだな、と思っていると

「通しといたから」

ヒルマさんが、おもむろに言った。

「えっ?」

意味をはかりかねていると、

「いや、君たちのバンドさ、店の大会を通過させて 店代表ってことで地区大会に駒を進めるんだよ」

みんな すごく驚いて、

「えっ!? だって・・・オレたち」

「うん、今日の演奏は納得出来ないんだろう? でも その失敗を補う迫力は充分にあったよ。審査員の人たちも ほめてたし」

「でも、あの うまいバンドはどうするんですか?」

「ああ。あいつらも合格。君らとあのバンドと 二つが今年のうちの店の代表だ」

 

各店の規模によって送り出せる代表の数がちがう。宮地楽器は、二つの枠を持っていたんだ。

「じゃ。ここで言った事は内緒だぞ」

それだけ言うと、店長はホールに向かった。

果たして。審査発表があり、オレたちとスタッフバンドが選ばれて。店大会優勝の賞状を受けとった。

勿論、完全なヤラセではなかったろう。オレたちも多くのステージをこなして、それなりのバンドにはなっていた。しかし、誰の顔も浮かないもので。

「これは、オレ達の実力で勝ち取ったものじゃない」

という後ろめたい思いが渦巻いていた。自信満々に、いろんなバンドからの祝福を受けるスタッフバンドとは対象的にね。

trophyをかざす勝者

 

それから一カ月ほどして。

地区大会は、渋谷のエピキュラスというヤマハのホールで行なわれた。

実は昔。ここでやった芝居の公演で失敗をし、オレとマネージャーの倉本は大借金を負った、因縁の場所だ。

「帰ってきた。帰ってきたぞ!オレは再びここに立つんだ」

なつかしさと苦い思い出が、オレを妙なトランス状態にして。宮地楽器での失敗を振り切るように、オレは歌った。

メンバーもかなり気合いの入った演奏をした。
しかし。

運が続いたのも ここまでだった。

地区大会。そこは激戦の地で、うまくて個性的な奴らがごちゃまんと出場していたんだ。当たり前だよ。みんな店大会の優勝者だもん。ハンパな奴はいない。

まだどこかで 「もしかすると」と、淡い期待を持っていたメンバーの願いは、当然のごとく打ち砕かれ、代わりに宮地楽器のスタッフバンドは この大会でも勝ち残り、中野サンプラザの関東甲信越大会への出場を手にした。

栄光と挫折。

明暗分かれた形で、宮地楽器の代表バンドは おのおのエピキュラスを後にした。

 

「クソー、このままじゃ駄目なんだな。これ以上 上に行こうと思ったら、ハッタリは通じない。パフォーマンスだけじゃ、バンドとして評価されない。音の充実を目指さなければ」

 

再び壁に突き当たって、考えた末に オレは「ギタースクール」に通いはじめた。

音を追求するには、楽器をやるのが近道って聞いたし。メンバーに教えてもらうのはイヤだったから、スクールに通ったの。
やってみて驚いた。
いかに何も知らずに音楽家気取りでいたことか。

「1・2・3・4、 1・2・3・4」

小節感も無いまま 歌っていたんだ。

断言するけど、ボーカリストも楽器をやらなけりゃダメ。「カラオケがうまいから、歌手になります」?  笑わせんじゃないよ。日本語書けるから、皆 小説家になれるのか?っていう話じゃない。

音楽の三要素っていうのがあって。

「リズム・メロディ・ハーモニー」

特にバンドマンに一番必要なのは、リズム。リズム感だよ。

音程が多少はずれても、リズムがしっかりしてれば パンクみたいでカッコいいけど、リズムが悪いと通用しない。現代音楽では。いわゆる「ダッセー」って言われちゃうんだ。
リズム&ブルースなんかは、一小節を16に細かく分けて考えているんだから、ちょっとズレたって、独特のグルーブがこわれちゃうからね。

だからバンドマン全員が、リズムの鬼になって、一人一人が「ドラマー」だぜって思ってプレイする。
ギターもベースも、ドラムを叩くつもりで弾く。それが「キレのいいプレイ」だ。

ロックキーボーディストなんか、文字通り ケンバンをドラミングして、叩いて弾いたりするでしょう?

ギター、ベース、キーボード、ボーカル・・・それ以外の楽器も全て。全員が「メロディのあるドラム」を叩いているんだよ。
そういう意識、大事だね。

そうやって楽器をはじめたら、だんだん「音楽的」な話ができるようになってきた。

スタジオに入って練習してる時にも、「1・2・3・4」って小節を感じながらリズムをとって、

「あのさ、そこのアレンジ シンコペーションして」

とか、

「もっと くずして フェイク気味にさ・・・・」

なんて言うと、マコトもヒカルも

「アレ?どうしちゃったの?」

なんて。

キョトンとした顔で、お互い顔を見合わせちゃってるんだ。

 

= つづく =

 

【 第12話 】へ

 

 

バックナンバー

【 第1話 】 Introduction

【 第2話 】 原宿歩行者天国

【 第3話 】 はじまり

【 第4話 】 ロックンロール・ジーニアス結成

【 第5話 】 音楽スタジオ作り

【 第6話 】 目標 年間100ステージ

【 第7話 】 TV出演

【 第8話 】 ギャラ30万

【 第9話 】 時間泥棒

【 第10話 】 オーディション

 

 

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ライター紹介 ライター一覧

ロックンロール 社長 池松 kaz

ロックンロール 社長 池松 kaz

株式会社ジーニアスインターナショナル
(http://www.genius-kaz.co.jp)代表。Smart CrutchJapan 代表。Lily Nily Japan 代表。Funky Station 代表。渋谷区在住。

貿易会社社長として活動する一方、ロックバンドのシンガー、サイドギタリスト、作曲家、作詞家としても活動し、音楽とビジネスの融合を目指す仕事を展開している。

この人が書いた記事  記事一覧

  • ライナーノーツ【 第3話 】オリジナリティとは?

  • ライナーノーツ【 第2話 】委任状契約

  • ライナーノーツ【 第1話 】プロローグ

  • 跳べ!ロックンロール・ジーニアス【 第18話 】-最終回-

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