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跳べ!ロックンロール・ジーニアス【 第16話 】

Rock Baby

音楽ドキュメント・ストーリー: レコード会社との契約交渉、イベント。楽しいことが舞い込む

 跳べ!ロックンロール・ジーニアス

1980年代に巻き起こった 原宿歩行天バンドブーム の真実

【 第16話 】 ファンキーなロックンロール

 

 

〔自分が求めていた音楽が、やっと見つかった〕

 

まわりの景色が一変した。

楽しいことが次々に舞い込んでくる―――

コンテストが終了した後も すぐには帰れなかったんだ。

「世界大会」の宣伝用のスチール写真を撮ったり、今後の予定を打ち合わせしたりで。

やっと解放された時には、夜というより深夜に近かった。
サンプラザの外に出ると、それでも大勢のファンが待っていてくれてさ。

「ワアーッ!」 「パチパチ」 「ヒューッ、ピーピー」

盛り上がって。 オレたちも、ファンの連中も 拍手したり抱き合ったり。本当はこのまま宴会でも、って所なんだけど、夜も遅いし終電の時間も迫ってきていたからね。メンバーも。いろいろ予定のある人たちだし。その場でお開きになった。

 

夜の帰り道

 

夜の街を歩きながら・・フフッ。

「そうか。こんなもんなんだ」

派手さとは裏腹に、ただ歩いて帰るだけの自分を もう一人の自分が笑う。

途中で缶ビールを買って、「プシュッ」っと開けて。一人で乾杯をしたんだ。中野の・・・警察学校の長ーい塀の前を、こみ上げてくる笑いをかみしめて踊るように歩く。未来のストーリーが次々に出て来て興奮した。

 

ツアー先の高級ホテルの部屋でインタビューされてるつもり。

「ああ・・この曲はツアー中の楽屋で作ってさ」なんて。ブツ・ブツ・・・ブツ・ブツ・・・ 一人ごと言っちゃて。ハタから見たら絶対変な奴に映ってたぜ。でも、もうその気になっちゃってるから本人、ポーズつけながら真剣に答えてる。結構 笑えるね。

「デビューは、あるコンテストで優勝したのがきっかけで・・」

 

インタビューされてるようすb

 

 

 

 

 

 

それからは 毎日があわただしく過ぎていく。

銀座のヤマハ東京本部にもよく顔を出して、細かい打ち合わせなんかをした。

「メルダックとキティレコードが、会おうかって言ってるよ」

そろそろレコード会社の話とかもあったりして。

「メルダック・・・? って聞いたことないなぁ」

そういう新しいレコード会社が どんどん出来ている頃だ。

「ダークダックスってコーラスグループがあるだろ?あそこが三菱に出資させて作ったレーベルで、メルダックの“ダック”は ダークダックスの“ダック”って訳さ」

「へー、なるほど」

そういう事情に関しては、知らないことばかりで。でも、いろいろ教えてもらううちに 何だかすごくプロに近づいてる気がしてきた。

アマチュア生活も もう少しだ。プロになったら、本当の意味での 年間100ステージ を実現させたい。ツアーに出るんだ 街から町。知らない土地で少しづつファンを増やして。海外にも行くぞ。オレの曲を気に入って貰って、レコードを買ってもらう。ボンジョヴィだって、そうやってデカくなっていったって言うし。確か そういう歌があったっけ。クリーデンス クリアウォーターの・・・ トラベリン バンド! そうだ、ロックンロール ジーニアス トラベリン バンドだ。

「カズさん、出てるよ!」

うちのスタッフが、音楽雑誌を買ってきて。そこには コンテストの記事が載っていた。

「優勝は、原宿歩行天出身のバンド、ジーニアス。得意のステージ パフォーマンスを駆使して、他のバンドを圧倒した・・」

 

取材された新聞記事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色んな雑誌に、コンテストの宣伝が載りはじめた。カラーで1ページ ドカーンと出てる。

「世界規模のミュージック コンテスト 『バンド エクスプロージョン』審査員には、ボンジョヴィのプロディーサーの・・・・」なんたら、かんたら。

凄い連中の顔写真が、ドーンと出てて。その隣に しっかりオレ達の写真も出てる。ハハ・・・・笑っちゃう。ギャグみたいな世界だ。一晩寝て 起きたら、世界の景色が一変してるの。

クラブチッタって あるじゃない? 川崎に。優勝したごほうびに、あそこでライブをやらしてもらったり。楽しい事が 次々に舞い込んでくる。

「カズ、大宮ソニックシティでイベントの仕事があるけど、やる?TV放映されるよ」

コンテストの責任者の和田さんって人が、そういう仕事を廻してくれていた。この時期は、3日に一ぺんぐらいの割合でステージに上がっていたんだ。今まで鼻にもかけてくれなかったような、業界の知り合いも急に優しくなったりね。去年お世話になった、宮地楽器のヒルマさんも 突然電話してきて。

「凄いじゃーん!スゴイよお、ジーニアス。 飲み行こう!」

興奮してた。みんなを引き連れて、高い酒をおごってくれたんだ。友達や好意的な知り合いが一気に増えた。オレは同じなのに、まわりの雰囲気が変化していったんだ。

 

そのヤマハのコンテストに「シフト」ってバンドが出場していた。ワイルドな、ロック・バンド。最初見て 「スゲエ、本物」カッコいいと思った。

今まで  ロックって言ったら、マコト  クレージーのフィルターがかかった ハードロックしか知らなくて。

「ロックというのは、こういうもので・・・・」

そうやって教え込まれて来たからね。

確かにマコトの言うロックもカッコいい。オレ好きだ。アイツが教えてくれたことは、オレのロックの基礎になってる。でも心のどこかで、もっと自分にぴったりくるものがあるんじゃないかとも思っていた。

そんな時。

「捜していた物って、もしかして これ?」

落し物を届けてくれたみたいに、シフトが現れたんだ。

マコトの教えてくれた ハードロッカー達のサウンドだけでは物足りず、ブルージーなものを求めていたオレは、「オールマン ブラザーズ」や、「レイナード スキナード」なんていう、いわゆるサザンロックにしびれていたんだ。「ZZトップ」も好きでよく聴いていた。
でも、それでも。何か足りないっていう違和感は ずっとつきまとって消えることがない。

それが 「ファンキー」というキーワードであることを気付かせてくれたのが、シフトなんだよ。シフトのサウンドは、ざっくりしたブルースロックのリフで、オレの好きな上質のロックンロールの匂いがした。しかも、オーソドックスな8ビートじゃなく、どこかしらハネてる感じで、「ファンキー」だ。

「ファンキー」っていうと、かわいい女の子の歌うR&Bみたいに軽くなりがちだけど。彼らのは「重い」ファンキー。それがすごくカッコいい。プレイには、ドラマとスリリングな「駆け引き」が備わっている。

 

ロックギタリスト写真

 

 

 

 

 

 

 

ミュージシャンの価値というのは、ポーンと一発、音を出した瞬間に決まる。

テクじゃないんだ。テクも必要だよ。 でも、もっと必要なのは そいつが弾く意味。

なんで「そいつ」じゃなきゃ いけないのか? たくさんいるプレーヤーの中から、そいつを選ぶ理由、価値。最も大事なのは、魅力的かどうかってことだ。技術を上回る魅力があれば、それでもいい。「へたうま」って言葉もあるくらいだからね。

連中はそういう魅力に充ちあふれていた。

ベースの大谷は、ハーフみたいで すごくルックスがいいの。客席で、女の子がポーッと見とれちゃう。それぐらいハンサムなんだ。しかも甘いルックスとは裏腹に、ズシンとうねるベースを弾くもんだから、そのギャップが魅力を倍増させる。声も太くてワイルドでさ。

ギターの草野ちゃんは、最初見た時、「泉谷しげる」かと思った。そういうルックスで歌うと、キャロルの ジョニー大倉みたいな、甘い雰囲気。プレイは思いっ切りよく、ワイルドでシンプル。音のスキ間を作る名人だよ。彼のギターリフは、ゾクゾクっとオレの感性をわしづかみにした。鳥肌が立つ。「ジョーペリー」っていうギタリストがいるけど、あんな感じ。

ドラマーはイサ。酒井伊佐夫だから「イサ」
ちっこくてドラムセットの中に隠れちゃうような奴だけど、大きなアクションで叩く。ドラムセットっていうリングの中で暴れまわる、ボクサーって感じ。アフターなリズムのカッコよさを、はじめて知らされた。初めてセッションした時、一瞬 ためすぎで「もた」ってんのかと思ったんだ。

でも、それがロックなドラムってことなんだよ。

アフタービートっていうのは、一流のロッカーの証。

「トリオ」は、究極のバンド構成でしょ? それ以上はけずれない。必要最小限のメンバー。

3人の音がうねり、からみ合い、とても3人で出してるとは思えない程の複雑で重厚な音楽になる。クールだぜ。バンドマンなら、一度はトリオでカッコいい音を出してみたい、と思うんじゃないかな。

正直に言うとね、あの中野サンプラザのコンテスト。

シフトが優勝してもおかしくなかった。
オレたちはバンドとして面白かったから優勝したけど、音楽的にはシフトの方が だんぜん上回っていたんだ。もちろん その時はそんなこと、おくびにも出さなかったけどね。

「オレたちが1番。当然でしょ」
って余裕の顔してた。でも・・・自分が一番わかる。

そのままだったら、つながりはそれで消えてしまったんだけど。ドラムの奴が、コンテストの後 クロコダイルにオレたちのライブを見に来てくれた。

「いやぁ、ジーニアス見てから 気になっちゃって。俺たちも、あのぐらい頑張らなくっちゃって話し合ったんですよォ」

「いやいや。そっちこそ・・カッコよかったよ。負けたかと思ったもん」

イサの奴、すごくオレたちの事 気に入ってくれて、それから友達になったんだ。お互いのライブに行くようになって。皆でメキシコ料理を食ったりさ。今では親友だ。

こっちも実力では負けたと思ってるから。自分に足りない部分は吸収したい。酒飲んで 熱く音楽を語り、抱き合って喜び合ったり、意見が違って激しくののしり合ったりとかね。すごく影響され合っていた時期だ。

「一緒にストリートで演奏しようぜ」

オレたちの機材を貸して。オレたちが終わるとシフトの演奏が始まって、シフトが終わるとオレたち。

かわりばんこで歩行天ライブを楽しんだ。たまにセッションしたり、ね。親友になったんだ。本当の友達って「才能」を認め合える奴だと思う。弱い部分でベタベタくっつくんじゃなくて。

「あいつのカッコ良さに負けないように、オレも成長しよう」

そう思える関係は素敵だな。そんなにしゅっ中 会う訳じゃないけど、会えばいつも刺激になる。オレの前に ハッキリと示してくれたんだ。坂本龍馬が勝海舟と出逢って開眼したように、オレは完全に覚醒めた。

オレの求めていた音楽、捜していたものは ファンキーなロックンロール。

そう。「ファンクン ロール」だったんだ! ってことを !!!
ところがこの年―――

 

何があったか憶えてる?

 

 

= つづく =

 

獲得したトロフィー

コンテストで獲得したトロフィー、賞状

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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バックナンバー

【 第1話 】 Introduction

【 第2話 】 原宿歩行者天国

【 第3話 】 はじまり

【 第4話 】 ロックンロール・ジーニアス結成

【 第5話 】 音楽スタジオ作り

【 第6話 】 目標 年間100ステージ

【 第7話 】 TV出演

【 第8話 】 ギャラ30万

【 第9話 】 時間泥棒

【 第10話 】 オーディション

【 第11話 】 もっと でかいコンテストを

【 第12話 】 テキ屋の親分

【 第13話 】 企画ライブ「 金網越しの DOWN TOWN 」

【 第14話 】 「SHOGUN」のMr.ケーシー・ランキン

【 第15話 】 グランプリ!

 

 

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ライター紹介 ライター一覧

ロックンロール 社長 池松 kaz

ロックンロール 社長 池松 kaz

株式会社ジーニアスインターナショナル
(http://www.genius-kaz.co.jp)代表。Smart CrutchJapan 代表。Lily Nily Japan 代表。Funky Station 代表。渋谷区在住。

貿易会社社長として活動する一方、ロックバンドのシンガー、サイドギタリスト、作曲家、作詞家としても活動し、音楽とビジネスの融合を目指す仕事を展開している。

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