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跳べ!ロックンロール・ジーニアス【 第2話 】

原宿駅写真

音楽ドキュメント・ストーリー  跳べ!ロックンロール・ジーニアス

1980年代に巻き起こった 原宿歩行天バンドブーム の真実

【 第2話 】 原宿歩行者天国

 

 

〔緊張して胃がキリキリした〕

 

はじめて原宿の歩行者天国に乗り込んだ日。

 

緊張して胃がキリキリした。

オレたちのスタジオには、エレベーターというものがついていない。
4階のスタジオから階段でふうふう言いながら機材を下ろすんだ。大変だよ。汗びっしょりかいて。何往復もして機材をおんぼろワンボックスカーに積み込む。そうやって。

大量の楽器とアンプ類で、タイヤがぺしゃんこになった車で原宿に着いたんだ。

10時頃着いたけど、まだ車がびゅんびゅん走ってる。
「アレ? 今日歩行天やらないのかなあ」
不安になっていると、昼すぎに白バイが何台もやってきて、走りながら円錐形の赤いパイロンをぽんぽん路上に置いていく。歩行者天国がはじまったんだ。

「よかった。」
ホッとして、機材を車から降ろしはじめていたらさ、

「なんだ、てめえら!!」

「・・・・・」

いきなり白バイに怒鳴られた。

「てめぇらみたいなのがいるから、こっちの仕事が増えるんだ」

あっち行けって。

本当にこういう言い方するんだよ、下品というか・・ 白バイって昔そういう・・追いかけられる側だった連中でも成れるのかな? どうなんだろ。夜中に走りながら爆音まき散らしてた連中が今は白バイ隊員に混じってんじゃねーか? と思ったもん。ホントに。

・・・でも、優しい白バイの人もいて。

「アレ? 君たちバンドやるの? いい機材持ってるねぇ。いやぁ、本官も昔ギターをやってて・・・・」

 

白バイのおまわりさん写真

白バイのおまわりさん

 

なんて話で盛り上がって応援された。ちょっとエライ人だよ、白バイのリーダーかなんか。

まあ、当時の原宿歩行者天国は開放的だったな、今みたいに規制でがんじがらめじゃない。多少のことには目をつぶってくれて。ウン。割と自由にやらしてくれたな。

 

 

「やったあ。おまわりさんが味方なら、恐いものナシだぜ」

ホッとして又 機材をセッティングしていると、

「コラ お前らァ! 誰の店の前だと思ってんだ。商売の邪魔だ、あっち行け」

今度はそばでタコ焼きをやいてたテキ屋のおじさんがスゴんで近づいてくる。

パシャパシャパシャ、 カメラ持ったヤツらがシャッターを切った。

パパラッチのイメージ

 

あそこらへんはスクープ写真を狙ってる 素人やフリーのカメラマンがうじゃうじゃいた。 面白い事件に発展すればいいのに、みたいな感覚で舌なめずりしてやがるんだ。パパラッチどもが。

「俺っちの店の前に来んじゃねえよ、タコ」

頬に長い切り傷があって、手にはタコ焼きの千枚通し持ってるでしょう? 刺されるかと思ってさ、ひやひやした。

「ヤバいんじゃないの? やっぱり・・・帰ろうよ

弱気になるメンバーをなだめて、

「スイマセン、オレたち、今週からここでやらしてもらおうと思って」

高いテキ屋の缶ビールを買って、飲みながら

「迷惑かけないようにやりますんで、駄目ですかね?」

他のメンバーもぞろぞろやってきて、皆でビールを買った。スタッフも、友人たちも。。
一気に何10本かビールが売れたら、少しおじさんも柔らかくなったんだよね。

「そうかぁ、本当は困るんだけどな。どういう音楽? ロック? うーん、ちゃんと毎週来れるのか? 毎週来るなら 俺んとこの店の専属バンドにしてやってもいいんだがな」

「はい。そりゃあ もう」

「来たり来なかったりじゃ駄目だぞ」

「わかってます」

店の専属って言ったって、屋台だし、ホコ天だし・・なんて理屈こねたら大変なことになる。ここは素直に、今 味方になってくれそうなものにはしがみつくんだ。溺れないように。

そうやって、認めてもらって。
やっと自分たちの場所。「溜まり場」を確保できたんだ。

「ようし、いよいよだ。おい、みんな 見回してみろよ。客がうじゃうじゃいるじゃないか! 早く演ろうぜ」

いそいそ準備をして。

ところがさ、いざ演奏をはじめてみると ぜんっぜん受けないんだな、これが。それ以前に客が寄って来ない。素通りして行くの。

「アレ? おっかしいな。音が小さいのかな? もっと大きくしてやってみようよ」

ボリューム上げたら、今度は耳をふさぎながら通り過ぎて行くんだもん。もう、どうしようもない。

結局、初日は惨敗だった。

打ちのめされて、スタジオに帰ってから大ミーティング大会を開いた。

「やっぱりさ、皆バラバラに勝手なこと演奏してるって感じだからさ。もっとリズム合わせていこうよ」

「そうだねぇ。まずリズムだよ。リズム」

トミノスケのタイコは、どんどん早くなってっちゃうし。全員それにつられて、ワーッと走っていっちゃう。

なぜ早くなるかというと、それはヘタだからだ。

悔しいからあんまり言いたくないけど、当時のオレたちときたら・・・ ヘタくそ素人だったんだよ。ライブハウスでしかやったことがない。ライブハウスなんて超ぬるま湯だ。身内が見にきてるんだから厳しいことも言われない。心の中じゃ「ド下手」と思っても、友達だから、そこはまぁまぁまぁ。。まぁ、まぁ、で済んじゃうなんて過保護な場所だよ。いきなり見知らぬ道行く人の冷たく厳しい目にさらされてやっと自分の立ち位置、実力のなさに気づいた。オレたちはヘタなんだ、ってことに。。

 

ヘタは「音のスキマ」を楽しめない。その「空間」が恐い。だから、スキ間が出来ると、すぐ誰かがそこを埋める。テンポを早くしていけば、スキ間はできづらいからね。どうしても 走った演奏になっていっちゃうんだ。

てことは、うるさいってことさ。スゴく耳障り。全員でガチャガチャ、音をかき鳴らしてるだけだから、音楽でも何でもない。歌なんか聞こえやしない。おかげて声は強くなったけどね。

当たり前だ。あの大音量と戦ってたらさ。イヤでもロックボーカリストが出来上がる。

次の週は―――雨で、歩行天中止だったのかな?

うん。ここぞとばかり、徹底的にリズム合わせの練習をした。

ドラムとベース、ギターとキーボードっていうふうに。2人ずつがまず合わせて、徐々に全員が参加していく。
リズムの「表」と「裏」を取る練習とかね、タンタンタンタン、 ンタンタンタンタ、 タンンタ、ンタタン、 タタン、ン、ンタタ・・・

やる事にはこと欠かないよ。素人さんたちだから。

あと、客寄せ用の「オープニングテーマ」を作ったんだ。「いきなり演奏するより、まず人の気を引いて立ち止まらせようよ」ってね。

「ジャーン」って白玉でコードを伸ばして、音と同時に全員がパッと散らばるの。ダーッ、と駆け出す。
あるいは「ティン、コン、ティン、コン」 オルタネイトピッキングで、客が寄ってくるまでずっときざんだりして。

そういう練習を動き付きでやった。公園で。
ラジカセに練習テープを吹き込み、それを鳴らしながら「ウォリャー」とキメのポーズを作る。フォーメーションで、この音の時、誰々はどこに移動する、みたいにね。公園にいる人には笑われたけど、カンケーないさ。そんなこと。

バンド打ち合わせ写真

 

「スコーピオンズ」っていうバンドのビデオを見ながら、皆で「うわぁ、スゴいね。誰かのヒザの上に乗って弾いたりするんだあ」ちょうど、運動会の人間ピラミッドみたいにね。人の上にのぼって弾く。

「マコトはさぁ、ギターとか回してみたら?」

ストラップごと回すのが、海外でハヤっていたし。
実際やってみたら「ガシャーン!」 ストラップ・ピンが抜けて レスポールが飛んでった。 砂利の上を自慢の「タバコ・レスポール」がガリガリガリ・・ レスポールのサーフィンだよ。何十万もするギターがサーフィンしたおかげで擦り傷がついたけどボディーは助かった。マコトの顔は真っ青になってたけどね。

「太くて長いロック・ピンで ネジがぬけないようにしなきゃ駄目かぁ」

こりないところがあいつのいい所なんだよな。

そういう準備をして、再びストリートに出たんだ。

まあ。そう簡単には変わらなかったけど、それでも徐々にね。ポツ、ポツと立ち止まる人が出てきた。

「いいか。1人だけでいい。1人が1人、客をつかまえろ。1人だけに向かって演奏しろ。1人だけの目をずっと見つめて演奏するんだ」

オレが言うと、女のメンバーは張り切った。

「よォーし。あたし、あのシマのシャツ着た男の子にするよ」

「じゃあ あたしは、あの坊主頭の少年担当!」

「自分の客を100%納得させるんだぞ。よっしゃ、行け。GO !」

ダーッと駈けてって、ヘタくそな割りに情熱のこもった目で、自分だけを見つめられると、何だか自分のためだけに演奏してくれているように思えてくる。悪い気はしない。その姿を見た第三者の客も、思わず 「熱い2人の関係」を面白がって見たりして。

そんな所から、客は食いついてきた。

オレは集まって来た客を少しでもつなぎ止めようとして、ヤマハの箱型スピーカーにのぼった。それを見ていたマコトが真似して反対側のスピーカーに飛び乗る。

「ウォーッ」という拍手がわき起こった。

よしよし、受けてるぞ。爆音とケンカするように、オレはシャウトする。

情けないことに、すぐノドがつぶれて声が出なくなった。
発声法もへったくれもないから。ただバックの音に負けないようにシャウトするだけだから。でもね。オレ、これで発声を覚えたんだ。

声がつぶれて。「どうしよう」と思ったけど、とり合えず歌うしかない。他に歌ってくれる奴はいない。1人1人、自分のことで精一杯だから。持ち場を死守、みたいな。

無理して声を出そうとするんだけど、「ハー」ってかすれて、声にならないの。しょうがない。ノドに負担をかけないように。ノドを広げて、炎症を起こした箇所に触れないように空気を出す。

実はこれが腹式呼吸の基礎なんだよ。長く息を吐く、発声の練習の意味がやっとわかった。最初はハッキリした声にならないから、心もとないんだけどね。

それから、毎週ストリートで演奏して帰ってくると、腹が痛い。「どうしたんだろう?」と思ってたんだけど、ある日気づいた。

「アッ、ずっと歌ってたからだ。そうか、腹から声を出すってこういうことなのか!」

 

発見だよ。
人間の体って、まるで大きな袋。長いチューブ。腹の袋から、いっぱいに詰まった空気を長いチューブに向かってしぼり出すんだ。声を出すって、歌うって、そういうことなんだよ。それが理解できてから、ねばりのある、太い声が出るようになってきた。

スピーカーに飛び乗るシンガー

レパートリーは5曲しかなかったけど、1日3ステージ。曲の順番を変えながら、さも新曲のようなフリをして切り抜けてたの。冷汗ものだ。

「あっ、あの子、又来てるよ」

トモコ チビ太が気づいたのかな? 気弱そうな少年が、次のステージも見に戻ってきてくれたんだ。

「あっ、また来てる」

「ほんとだァ。うれしいね」

何度も来る常連になってくれたの。常連第1号。そのうち皆が気にして、その少年を捜すようになってきた。

「きてる。きてる。」

「ホントだ。また、こぶし 握ってるよ」

オレがシャウトしながら、客に言ったんだよ。

「イェーイ。ノッてるかい? 恥ずかしかったら、別に無理しなくていいからさァ。でも 楽しいと思ったら、“心の中”だけでも そっと こぶしを振り上げてくれよなーッ!」

そしたらね、少年が反応してくれたんだ。大人しい子だよ。シャイな少年。でも彼、精一杯自分の心と戦ってくれた。

両方の手を“ぎゅっ”と握りしめて、その手を振り上げるんじゃなくて、下にね。突き下ろしてた。曲に合わせてずっと。体が小刻みにゆれて、顔はぎゅっと口を結んで、紅潮している。表情は乏しいけど、充分楽しんでくれてるのが解るよ。

「こぶし少年」

オレ達は、彼に敬愛を込めてそう呼んでいた。

「ジーニアス」を認めてくれた、はじめてのファンだからね。うれしくて いつも彼の姿を捜していたんだ。

 

= つづく =

★原宿ストリート・ライブ決行当初

はじめのころは、あまりお客さんもいなかった。

それでも路上に座り、Genius の演奏を聴いてくれる人たちが少しずつ増えていった。。写真はリード・ギターのマコト・クレイジーと、キーボードのヤスコ・クイーン。Live演奏が終わったばかりで、奥の客は興奮がおさまらず立ち上がって咆哮している。徐々にそういう客が増えていく☆

左奥に見えるのが、ボクらを「専属バンド(笑 」にしたテキ屋のおじさんの屋台。喧嘩っ早いおじさんで、
しょっちゅう誰かとトラブルを起こしてましたよww

ギタリスト写真

マコト・クレイジー(guitar)と ヤスコ・クイーン(keyboard)

 

 

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ライター紹介 ライター一覧

ロックンロール 社長 池松 kaz

ロックンロール 社長 池松 kaz

株式会社ジーニアスインターナショナル
(http://www.genius-kaz.co.jp)代表。Smart CrutchJapan 代表。Lily Nily Japan 代表。Funky Station 代表。渋谷区在住。

貿易会社社長として活動する一方、ロックバンドのシンガー、サイドギタリスト、作曲家、作詞家としても活動し、音楽とビジネスの融合を目指す仕事を展開している。

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