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跳べ!ロックンロール・ジーニアス【 第7話 】

シンガー写真

音楽ドキュメント・ストーリー  跳べ!ロックンロール・ジーニアス

1980年代に巻き起こった 原宿歩行天バンドブーム の真実

【 第7話 】 TV出演

 

 

〔ファンが NHK に投書してブレイク〕

スタジオにファンレターが送られてくるようになった。

「GENIUS 最高! ずっと続けてください」

ってハガキに書かれた短い物から、ずっしりと何枚にもわたって書きつらねられた封書まで。毎日何かが届くのは楽しみだ。
気弱そうな声で、

「ボ・ボク、ファンなんです。また来週見に行きますんで、よ・よろしくお願いします」

なんていう電話もかかってきたり。

「バンドのテープが欲しい」って注文もあった。

デモ・テープは、スタジオのレコーディング機材を使って録音した手作りのものを。最初はポツポツ、欲しいって人にダビングして送ってたの。でも、あんまり量が多くなってきたから、ストリートで売りはじめたんだ。1個500円。あの当時だからCD じゃない。カセットテープだ。

 

夏場なんて、200本ダビングしても アッ、という間に売り切れちゃう。

レイ・ギャングが1個づつ手作業でダビングしてるから、200本が限界なんだけど。

六倍速の機械を買ってね、セッセ、セッセとダビングしてた。1日何本ノルマ・・・なんて決めて。大変だと思うよ。自主制作のCDにして大々的に売れば、商売として成り立っただろうに。当時はそういう考えはしなかったんだよなぁ・・ヘタくそな演奏だったしね。

「オレたちアマチュアだから、音楽で商売するのはちょっと・・・」

なんて気が引けてたんだ。

でも、あんまりにも「バンドのテープ」が売れるんで。それを見ていた外人のファンが、

「ボク ジーニアスのT-シャツ作ったんだけど、売っていいかなぁ」

なんて、デモテープのそばで売り始めた。勝手に商売はじめちゃってさ。
フフ・・でもそれは・・そんなに売れなかったみたい。もうけを意識しすぎて値段設定が高かったせいじゃないかな?

カセットテープの画像

 

 

 

 

 

 

 

ある日曜日。

1ステージ目のライブが終わって汗を拭いていると、NHKの「YOU」っていう番組のディレクターが来て。

「ジーニアスのことを取材して、特集して欲しいっていう手紙が届いたんですよ」

って言うの。

「へー」って思ったけど、全然興味ないフリしてね、

「TVっスかぁ」

関係ないね、って感じでそっけなく次のステージの準備をしてたんだ。

そのステージを見たディレクターの人、「これはいける」と思ったみたいで。
今度はカメラマンを連れて来て、ステージを映してる。

「今度、スタジオ見に行ってもいいかなぁ」

って言うから、

「ああ、別に構わないですけど」

って答えたら、さっそく次の日にやってきた。
「へー。このスタジオも自分達で・・・ ホォー。お金かかったでしょう?」

細かいことまで取材してくる。

「実はこれなんですけどね」

投書の手紙を見せてくれたんだ。こんな風に書いてあった。

「先日、偶然 原宿の歩行天を歩いていたら、『ジーニアス』というバンドが演奏していて。あまりの衝撃に目まいがして、その場に立ち尽くしました」

その表現に皆がドッと笑った。
有難い話なんだけどさ。そのぐらい衝撃を受けたんだって。

その番組は若者向けの、NHK にありがちな「青年の主張」みたいな番組で

「今度アマチュアバンドの特集をやることになったんですよ。その中のコーナーで、バリバリ活動してるバンドの代表ってことで、ジーニアスを紹介したいんですけど」

 

そういう流れでNHKに呼ばれて行った。

番組出演者だよ、「関係者以外立ち入り禁止」って書いてある所を、バシバシ突っ切って行けるわけさ。

「ウァーオ」って感じだ。NHK見学に来てる学生たちに見られながら、警備員のおじさんが開けてくれるドアを「どうも、どうも」なんて言いながら通っていく。カッコいいー、オレはビートルズか? スターに見られてるだろ、って。単なる勘違いだけど気分的には、そういう感じ。

「オレ、これからNHKホールでコンサートだから」

なーんてね、セリフをつぶやいてみたりして。

 

テレビ局パラボラアンテナ テレビ局イメージ

 

 

 

 

 

 

 

ところが収録現場に行ったら、自分の思い描くイメージと現実のギャップにガックリきた。

アマチュアバンドばっかりが集まってて。超ヘタクソなビデオ映像が流れてて、なんだか観念的な理屈ばかりこねまわしてて。NHKだよ、青年の主張だ。生意気な意見ばかりは言うけど、何もやってない奴ら。

そういうだらだらしたリハーサルをやってる所に突然オレたちの映像が流れだした。この間ストリートで撮影していたやつだ。マコトのギターから花火がぴゅー! オレがバッターンと倒れてゴロゴロゴロ・・ 立ち上がって鍵盤をドラムのように叩く(弾く?)キーボーディスト。
ダーッ、と駈けてって散らばり バッと集まるフォーメーション。

 

「おおおお! 何だ、こりゃ・・すげえ」

 

断っとくけど大袈裟な表現じゃないよ。そこの会場にいた全員がワッ、とモニターTVのまえに寄ってきて・・

「ああっと、つ・続きは本番で・・」

慌てた番組スタッフがオレ達のビデオを消した。

 

これが ジーニアスのテレビ取材映像だ(You Tube 動画)

 

そのぐらいの圧倒的な存在感だったから、本番期待してたんだけど・・
大して変わらなかった。他の連中の扱いと似たようなもので。「ゲスト」だと思って行ったけど、ゲストは他にいたし。適当に番組の盛り上げ役に使われたって感じで。

「なあんだ。こんなもんか」

ってガッカリしたもんね。

 

Cameraman in TV studio

 

Floodlights at a film studio

 

ところが、TVってのは恐ろしいもので。

NHKは全国放送でしょう? 次の週から、ウワーッと人が増えた。全国からTV見て会いに来る。

「ファンになりました、がんばってください」

って握手を求められたり。二重、三重に取り囲んでステージ見てた観客が、五重くらいに増えて、それでも見えないから木に登って見てる客もいた。

客だけじゃないよ。オレ達の真似して、バンドがいっぱい出てきたの。オレらの機材をチェックして、「発電機を使うんですか?」とか、「誰かの許可を取るんですか?」なんて聞きに来る。揚げ句の果てには、オレ達の場所に ちゃっかり別のバンドが陣取ってたりして。

「アレ? そこ、毎週オレたちがやってる場所・・・・」

って言っても。

「関係ないですね。あたしたち、朝早くから来て場所取りしてたし。ここ、誰の場所って法律で決まってる訳でもないんでしょう? 路上だし」

って強気なの。 おまえら、オレ達の真似して出てきたくせにマナーがなってないな、とカチンときた。女のヴォーカルがリーダーみたいなバンドだったけど・・

「んじゃ、しょうがない。言いたくないけどさ、後ろの屋台のおじさん見て」

「・・・・・?」

「あの人たちさ、オレたちの演奏ですごく売り上げが上がったんだって。もし君らがオレたちぐらい人を集められるって言うんなら、ここ譲ってもいいけど、そうじゃなかったら・・・・ ヤバいよ。刺されることはないだろうけど、指ぐらい詰めさせられるかも」

って言ったら、そそくさと移動してっちゃった。タチの悪い脅しだけど、あながちウソとも言い切れない。結構テキ屋の人たちってさ、恐い部分ももってるからね。

「TVを見たよ」って人たちが、地方からも来るようになったから後ろの方は見えない。だから木にいっぱい人が登って見てる。歩道橋の上も満員・・ 黒山の人だかりってのはこういうことを言うんだろう。

スタッフが数えたら、700人ぐらいがステージを取り囲んでるの。客の反応も凄くいい。老若男女、いろんな国の奴らが国籍に関係なく、オレ達のライブで1つになる。あの場所だけ凄くインターナショナルだったね。

最高だ。音楽はどんな言葉よりも強力に、一瞬で人を説得する。

 

ジーニアスがはじめた事は、社会現象になって。徐々に、歩行天バンドブームがわき起こっていくんだ。

 

= つづく =

オンエアー 点滅

 

 

 

 

 

 

 

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バックナンバー

【 第1話 】 Introduction

【 第2話 】 原宿歩行者天国

【 第3話 】 はじまり

【 第4話 】 ロックンロール・ジーニアス結成

【 第5話 】 音楽スタジオ作り

【 第6話 】 目標 年間100ステージ

 

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ライター紹介 ライター一覧

ロックンロール 社長 池松 kaz

ロックンロール 社長 池松 kaz

株式会社ジーニアスインターナショナル
(http://www.genius-kaz.co.jp)代表。Smart CrutchJapan 代表。Lily Nily Japan 代表。Funky Station 代表。渋谷区在住。

貿易会社社長として活動する一方、ロックバンドのシンガー、サイドギタリスト、作曲家、作詞家としても活動し、音楽とビジネスの融合を目指す仕事を展開している。

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